「ねぇ、ここって本当に廃村なの?」
大学生の三人組、夏美、優斗、真哉は、廃村と噂される村に肝試しにやってきた。
「そうらしいよ。河童の集団に復讐されて廃村になったって言われてるんだ。」
優斗が言うと、真哉は興味津々の表情を浮かべた。
「河童?本当にいるの?」
夏美が疑問を投げかけると、優斗はにやりと笑った。
「怖がらなくても大丈夫だよ。ただの妖怪の一種だからさ。」
しかし、村に足を踏み入れると、三人の表情は一変した。
午後1時、村は静寂に包まれている。初めははしゃいでいた三人だが、あちこちから感じられる得体のしれない気配に段々と無口になっていく。
「なんだか、気味悪いね…」
夏美が小声で呟くと、優斗も同意した。
「確かに…ここには何かが潜んでいるような気がする。」
真哉の言葉に、三人は不安を募らせながらも、進んでいく。
すると、道路脇にある古い家屋の前で、彼らは奇妙なものを見つけた。
「これは…人形?」
夏美が手にとって見せるのは、壊れかけた人形だった。その人形は、不気味な笑みを浮かべている。
「これ、どうしてこんなところにあるんだろう…」
真哉が首を傾げると、優斗がふと口を開いた。
「そういえば、この村では河童の人形を作る伝統があるって言われてるんだよ。」
三人は不思議な感覚に包まれたまま、村をさらに進んでいく。
すると、突如として空気が変わった。周りに立ち並ぶ家々からは、不気味な声が聞こえてきた。
「ひひひひ…」
「誰だ、そこにいるのは!」
夏美が声を上げると、優斗が彼女の肩を抱えた。
「落ち着いて、夏美。ここはただの妖怪伝説の舞台に過ぎないんだから。」
しかし、その言葉は夏美の不安を解消することはできなかった。
次第に、三人は村の中心にある川へと足を進めていく。川岸には数々の河童の人形が並んでいた。
「ここだ…河童の集団が復讐した場所だと言われている川だ。」
真哉が囁くと、優斗が一つの人形を手に取った。
「これって…」
その人形には、見覚えのある顔が彫り込まれていた。
「これって、私たちの顔じゃない?」
夏美が驚きを隠せない声で叫ぶと、優斗がにやりと笑った。
「これはきっと、河童たちが私たちを警戒して作ったんだよ。」
その言葉に、三人は戦慄した。
すると、川から河童の姿が現れた。
「さぁ、お前たちの復讐の時間だよ。」
河童の集団が三人を取り囲む。
「待って、何に復讐されるって言うんだ!」
夏美が必死に訴えるが、河童たちはひたすらに笑みを浮かべている。
「お前たち人間が、河童の人形を作り、嘲笑った罪だよ。」
三人は絶望の中で、河童たちに引きずり込まれていった。
その後、三人の姿は二度と見ることができなかった。
廃村には、彼らの姿を象った河童の人形が増えていった。
そして、それを見た人々は、廃村が本当に河童の集団に襲われたのだと信じるようになった。
しかし、真相は闇の中へと消えていった。
終わり