かなり昔の話、とある古都に、人々から恐れられてきた九尾の狐がいました。その狐は、美しい女の姿に変身し、人々を惑わせ、時には悪戯を仕掛けることもあったと言います。
その狐は、都の外れにある古びた神社によく現れたそうです。その神社には、大きなケヤキの木があり、狐はよくその木の上から都を見下ろしていました。人々は、狐がケヤキの木に宿っていると信じ、神社に近寄ることを恐れていました。
ある年の夏、都に大雨が降り、神社の古い本殿が倒壊してしまいました。人々は、狐の仕業だと噂し、ますます神社から遠ざかるようになりました。しかし、不思議なことに、その年の秋、ケヤキの木にはたくさんの実がなり、都近くの地域はかなりの豊作に恵まれたのです。
それからというもの、人々は狐を恐れながらも、どこか感謝の気持ちを抱くようになりました。そして、毎年秋には、ケヤキの木の下で狐に感謝の祈りを捧げるようになったといいます。
狐と神社の不思議な力
時が流れ、多くの年月が過ぎました。狐の姿を見た者は誰もいなくなり、伝説となって語り継がれるだけとなりました。しかし、神社のケヤキの木は、今もなお都を見守り続けています。
ある夜、満月が夜空を照らしていました。神社の古い石段を、一人の老人がゆっくりと上っていました。老人は、子供の頃からこの神社に親しみ、狐の伝説を聞いて育ちました。
石段を上りきると、ケヤキの木の下で立ち止まり、深呼吸をしました。すると、老人の耳に、かすかな声が聞こえてきたのです。「ありがとう」。それは、まるで狐の声のようでした。老人は静かに目を閉じ、ケヤキの木に向かって感謝の言葉を捧げました。
翌朝、村の人々は、ケヤキの木の下に、美しい狐の石像が置かれているのを発見しました。石像は、まるで生きているかのように、都を見つめていました。人々は、狐の霊が、村の守り神として、永遠にこの地に残り続けることを確信しました。
それからというもの、神社には、狐の石像を慕って、多くの人々が訪れるようになりました。人々は、石像に触れると心が安らぎ、願いが叶うという言い伝えを信じています。
今でも、夜になると、ケヤキの木の下から、狐の鳴き声が聞こえてくることがあると言います。それは、狐が、今もなお、この神社と都を見守り続けている証なのかも知れません。
あなたの街にも、狐の伝説はありますか?
この物語は、あくまでもフィクションですが、日本には、狐にまつわる様々な伝説が残されています。あなたの街にも、狐の伝説があるかも知れません。