夕暮れの悪夢

 まだ僕が小学生だった頃、夕焼けが茜色に染まるまで、公園で友人たちと鬼ごっこをして遊んでいたあの日。

日が暮れるのが早く感じられ、お母さんに怒られる前に急いで家に帰ろうと、友人たちに別れを告げた。


「じゃあな!」


そう叫び、いつものように公園の出口に向かう。しかし振り返ると、先程まで一緒に遊んでいたはずの友人たちの姿はどこにもなかった。


「あれ?みんなもう帰っちゃったのかな?」


少し寂しい気持ちになったが、自分も急いで帰ろうと歩き出した。

しかし、公園を出ようとしたその時、背後から誰かが僕の名前を呼ぶ声がした。


「〇〇!ちょっと待って!」


それは、さっきまで一緒に遊んでいた友人の声だった。嬉しくなって振り返ると、そこには見覚えのない男が立っていた。男は不気味な笑みを浮かべながら、手招きしながらこう言った。


「どこへ行くんだい?一緒に遊ぼうよ」


男の顔は影に隠れてよく見えなかった。

僕の全身に恐怖が駆け巡り、無意識に出口に向かって走り出した。男が追いかけてくる気配がある。必死に走るが、すぐに男に肩を掴まれてしまった。


「お願いだから放して!」


そう叫びながら男の手を振り払い、公園の奥へと走った。薄暗い遊具のトンネルの中に隠れると、心臓がバクバクと鳴っていた。

しばらく隠れていると、男の足音が遠ざかっていくのが聞こえた。


「よかった…」


安堵したのも束の間、背後から夏とは思えない冷気が漂ってきた。恐る恐る振り返ると、そこには真っ白な顔の男が四つん這いで近づいていた。男は何も言わず、口らしきものを大きく開いて僕を見つめていた。


「うっ…」


恐怖のあまり、僕はそのまま気を失ってしまった。


目が覚めたのは、次の日の朝の自宅のベッドの上だった。

昨日の出来事はまるで悪夢のようだった。しかし、あの時に感じた冷気や、だらしなく開いた口、男の白い顔は、今でも鮮明に覚えている。


それ以来、僕は夕暮れの公園に一人では行かなくなった。そして、あの日の出来事を誰にも話すことはなかった。


最新記事

妻のマグカップ

 ある晩、古びたアパートの一室で、僕は妻のマグカップを手に取っていた。茶色く、無数の細かいひびが蜘蛛の巣のように広がったそのカップは、妻が最期の時まで肌身離さず使っていたものだ。彼女が冷たくなった後も、僕はこのカップを捨てることなど到底できなかった。いつも彼女が淹れてくれた、焦げ...