先日、郊外の一軒家に引っ越したばかりの私達家族。静かな環境を求めて選んだはずの家が、ある夜から奇妙な現象に見舞われるようになった。
それは、深夜に聞こえてくる赤子の泣き声だ。最初は、近所の家の赤ちゃんが夜泣きをしているのかと思った。しかし、その泣き声は、日に日に大きくなり、場所も特定できないほどあちこちから聞こえてくるようになった。
最初は気にせずにいたが、だんだん気になって眠れなくなってきた。ネットで調べてみると、昔話に出てくる「子泣きじじい」という言葉が目に留まった。まさか、そんなものが実在するはずはないと最初は思ったが、深夜に聞こえてくる泣き声は、昔話で聞いた子泣きじじいの話と重なって、ゾッとするものがあった。
ある晩、勇気を振り絞って、泣き声が最も大きく聞こえる方へと向かってみた。懐中電灯の光を頼りに、庭を彷徨っていると、遠くにぼんやりと白い影が見えた。近づいてみると、それは小さな子どもの姿をしていた。
「どうしたんだい?」と声をかけると、子供はますます大きな声で泣き始めた。思わず抱き上げようとした瞬間、子供の体が急に重くなった。まるで、鉛を掴んでいるような感覚だ。そして、子供の顔を見ると、そこには老人の顔が浮かんでいた。
恐怖に震えながら、子供を放り投げようと試みたが、びくともしない。そのとき、ふと昔話の内容を思い出した。子泣きじじいは、一度抱き上げると絶対に離れないという。
絶望感に打ちひしがれそうになったその時、ふと庭に置かれたホースが目に入った。咄嗟にホースを掴み、子泣きじじいを吹き飛ばそうとした。水しぶきを上げながら、子泣きじじいは庭を駆け回り、最後は茂みの中に姿を消した。
それからというもの、奇妙な泣き声は聞こえなくなった。しかし、あの夜の恐怖は、今も私の心に残っている。
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