未だにあれはいったい何だったのか、不思議なライブ配信を見たことがある。
今も気になって仕方ない話だ。
たまたま見つけたその人は、某県の有名な繁華街を自撮りしながら配信していた。
始めて来たらしく、物珍しそうにあちこちを紹介していて楽しそうだった。
人の往来もそれほど混雑していなく、まだ日が沈む前で、コメントなんかも盛り上がっていたのを覚えている。
配信者が薄暗い路地を見つけて「ここを抜けたらどこに繋がってるんだろう?」って言いながら入っていった。
暗く狭い路地で、みんなワクワクしながら画面にくぎ付けだ。
土地勘のある人がどこそこの商店街に繋がっている、とコメントしていた。
配信者が暗い路地を抜けると、そこは明るい商店街だった。
そこにはどんなお店があるんだろう?ってまた歩き出したんだが、少し歩いて配信者のトーンが下がる。
店は開いているけど誰も人が居ない。どこにも人っ子一人いない。店員すらいない。
しかも店内の商品は腐っていたり古びている物ばかり。
そんなはずはない、いつもその商店街は買い物客や観光客で賑やかだ、と地元民のコメント。
近所の人が、配信者を探してその場所に駆け付けたが、人で賑やかだと。配信者は見当たらない。
配信者は少し興奮気味に誰も居ない商店街を映して歩いてる。
良く見ると、看板の文字なんかが見たこともない漢字であり、いったい何語なのか解らないものだった。
商店街を外れると、もうそこは軽く廃墟みたいになっていて、配信者もコメントもパニック。
陽も陰ってきて、辺りは薄暗くなってきて恐怖が伝わってくる。
もう異世界だった。
あの薄暗い路地を戻れば元の世界に戻れるんじゃないかとコメントがあり、配信者もこれ以上暗くなる前にと急いで戻る。
路地に入ると、一層暗く恐怖を煽った。
みんな息をのんで見守っていたが、映像がいきなり途切れ、配信は終わってしまった。
あれはいったい何だったのか。
配信者はどうなってしまったのか。
あれ以来、配信者は二度と配信はしていない。
無事に帰ってこれたことを祈るしかない。