誰もいない音楽室の秘密

 かつて、その小学校の音楽室は、不気味な噂の的となっていた。古びたピアノから漏れ出す妖しげなメロディ、誰もいないはずの部屋から響く足音、そして夜になると現れるという白い影…。誰もが恐れおののく場所だったのだ。


そんな中、音楽部の生徒・美咲は、その噂を信じていなかった。ただ、古いピアノの音色が心を惹きつけるのだった。放課後、誰もいない音楽室で、美咲はピアノの前に座り、静かに鍵盤を弾き始めた。


すると、突然、窓の外から物音が聞こえた。恐る恐る窓の外を見ると、そこには大きな猫がいた。その猫は美咲を見つめ、何か訴えかけるように鳴いているようだった。


美咲は猫に近づき、そっと撫でた。するとその猫は大きく鳴き、美咲の腕に擦り寄ってきた。その瞬間、美咲はこの猫が特別な存在であることを感じたのだ。


以来、美咲は毎日音楽室を訪れ、猫と過ごすようになった。その猫の名をメロディと名付けた。メロディは、美咲がピアノを弾くと、いつもそばにいて、優しい目で美咲を見つめていた。


ある日、美咲はメロディの首輪に小さな鈴がついていることに気づいた。その鈴には、古代文字のような見慣れない文字が刻まれていた。


美咲は、その文字を解読しようと図書館で調べ始めた。そして、ある本の中で、その文字が古代文明の言語であることを知った。その文明は高度な音楽の知識を持っていたという。そして、その人々は音楽を通して宇宙と交信していたというのだ。


美咲は、メロディがまさにその古代文明の末裔であり、その体内に音楽が宿っていると確信した。


ある夜、美咲はメロディと共に、古いピアノの前に座った。そして静かに鍵盤を奏でると、メロディは奇妙な鳴き声を上げ始めた。しかしやがてその声は、まるで宇宙の彼方から聞こえてくるような神秘的な美しいメロディへと変わっていった。


その瞬間、美咲は自分が特別な存在であることを感じ、メロディと共に宇宙とつながっているような感覚に包まれたのだった。


以来、音楽室は、もはや恐ろしい場所ではなくなった。そこには、美咲とメロディ、そして宇宙を繋ぐ美しい音楽が響き渡っているのだった


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