あの駅は、街の少しはずれにひっそりと佇んでいる。終電を過ぎると、辺りは真っ暗闇に包まれ、まるで時間が止まったかのような静けさに包まれる。そんな駅で、最近奇妙な目撃情報が相次いでいた。
それは、誰もいないはずの夜中のホームに、人影がたたずんでいるというものだ。近所の住民からは、「寂しそうな顔をして、ずっと同じ場所にいる」とか、「遠巻きに見ると、まるで影のよう」といった声が聞かれた。
私は、その話を友人から聞いて、最初はただの噂だと流していた。しかし、ある夜、ふとしたことからその駅へと足を運んでしまったのだ。
時刻は午前2時を回っていた。ホームは、街灯の光すら届かないほどの暗闇に包まれていた。恐る恐るホームの先へと歩いていくと、遠くに人影が見えた。噂通りの、寂しそうな人影だった。
私は思わず足を止めた。その人影は、まるで私の方を見ているようだった。心臓がバクバクと鳴り響く中、私はその場から立ち去ろうとした。
その時だった。遠くから、貨物列車の轟音が聞こえてきた。私は思わず振り返り、人影の方を見た。すると、その人影はゆっくりと線路の方へと歩き出し、そして、轟音を立てて通り過ぎる貨物列車に飛び込んでいった。
しかし後に残るのは、貨物列車が通り過ぎた後の静けさだけだった。
次の日の朝、その駅で朝のラッシュアワーに飛び込み自殺があったというニュースを聞いた。私は、昨日の夜見た人影が、何か関係あるのではないかと感じた。
それ以来、私はあの駅には二度と足を運んでいない。しかし、今でも時々、夜中に目が覚めると、あの寂しそうな人影が目に浮かぶことがある。
あの駅には、今でもあの人影が寂しそうに佇んでいるのだろうか?
私はそれを確かめる気にはなれない。
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